ABS
朝から雪が降ったり晴れ間が出たり変な天気だった。一時、あられが強く降り建物の中にいてもザーという音が聞こえてきた。
帰ろうと思ったときにぼたん雪に変わり積もりそうな勢いだったので、積もらないうちに早く帰ろうと事務所を出た。ガレージから外に出ると空が暗くなっており雪の勢いはさっきよりも強くなったようだ。5分も経っていないくらいの短時間に道路には雪がもう積もっていた。スリップしないようにゆっくりと走った。カーラジオにバリバリという雑音が聞こえると同時にピカッと光りすぐに雷鳴が聞こえた。雪のときの雷は珍しい。空は暗く雪がますます強くなったので前が見えにくい。
前の車もゆっくりと走っている。赤信号で止まろうとブレーキを掛けるとガガガガという音がしてタイヤがガラスの粒々の上をこすって動いているような衝撃がブレーキペダルを通じて伝わってきた。前にも経験していることだが最初これを経験したときは車が壊れたのかと思って怖かった。確かめたわけではないがABS(Anti-lock Breaking System)が働いたのではないかと思っている。信号が青に変わり発進するときもゆっくりと発進しないとガリガリとなる。
信号のない横断歩道があった。自転車にのった男性と歩行者の女性が車の切れ目を待っていた。前の車との間を空けゆっくりと走っていたためか自転車の男がこちらが止まるのを確認せずに渡り始めた。急ブレーキを掛けると滑ると思ってブレーキをゆるゆると踏んだのだが車の速度は落ちない。道路が乾いていればちょうど手前に止まるくらいの強さで踏んだはずなのだが、このまま行くと自転車にぶつかっていまう。あわてた。ぶつかりそうになったのでブレーキを強く踏んだらまたガリガリという音がして直前で止まった。
歩行者の女性の方はこちらがまた動き始めると思ったのか渡り始めない。女性と目を合わせると女性は安心して渡り始めた。視線を合わせただけなのだが、先方は「先に渡ってもいいか」と聞いているようであり、こちらは「お先にどうぞ」と言ったつもりである。無言で身振りも手振りも示さなかったのだけど目と目を合わせるだけで意思が通じるというのが面白い。(ただ、たまに相手の意思を誤解するときもあるけど。)
何台かに追い抜かれたが前の車も遅かったのでゆっくり家まで走った。途中、前に車が通ってなくて雪が積もったままのところを通ったがブレーキをかけずにゆっくり走ったためか滑りもせずガリガリも言わず通れた。
家に帰り着いてほっとした。ワイパーでかき寄せられてフロントガラスの横に固まったようになっている雪を取り除いた。雷は止んでいるし雪も小降りになっていた。前線が通りすぎたのかも知れない。ちょうど一番ひどいときに走ってたようだ。
中指の付け根の白い傷跡の痛みを思い出せないでいる (新井蜜)
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